『掏摸』中村 文則
どうも。
本やコミックについている帯は一つにまとめてとっておく派のバター猫です。
本日の書評は思わずはっとなるようなこちら。
『掏摸』
まただ、と思った。取った記憶はなかった。自分が今日手に入れた財布の中で、最も高価なものに違いなかった。
東京を仕事場にする天才スリ師。
ある日、彼は「最悪」の男と再会する。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前が死ぬ。逃げれば、あの子供が死ぬ……」
運命とはなにか。他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の想い、その切なる祈りとは——。
作品紹介
この物語の主人公はとあるスリ師なのですが、ある日、彼は昔の知り合いと再会してしうことから、少しずつ巨大ななにかに巻き込まれていきます。
それは一般的には裏社会という呼ばれ方をするような法の外の世界の話。
その巨大な世界にたった一人のスリ師という小さな存在が、どう向き合い、そしてそれがどういう結末をたどるのか。答えはこの小説の中に描かれています。
ワンポイント
私がこの小説を読み始めて、まずはじめに感じたのは、
「リアルだなあ」というものでした。
そう思ったのは目が疲れてきて、栞を挟んで、本を閉じたとき。
まるでフォトリアルのゲームや、映画を観たあと特有の「その世界に入り込んでいた感覚」がそのときあったのです。
スリや風景の描写、主人公の内面を描く上手さ、このような技術はさまざまなところでこの小説の世界に自分が染み込んでいくような錯覚を与えてくれます。
そしてそれこそが、作者の狙いであり、この小説の構図を理解する上で重要なものになっているのです。
まとめ
この作品を読んだあとはついつい前を歩く人のポケットとか、自分の財布の位置なんかが気になってしまいます。笑
興味のある方は(スリにという意味ではないですよ笑)、
ぜひ読んでみてください。